アルコール依存症の元恋人Kさんと、こちらもまたアルコール依存症である今の恋人Aさん。
そしてなぜか彼らに惹かれ、「放っておけない」と考え奔走してしまう著者の小指さん。
アルコールを摂取してはトラブルを起こし、しかしそれでもやめられずにまた飲んでさらに大きな事件や事故を起こしてしまう、まさに宇宙人の2人。
そしてそんな彼らを放っておかないことで、実は彼らに依存してしまっている共依存体質の著者。
著者は彼らと向き合うことで見ないようにしていた自身の体質や過去や家族と向き合おうとする。彼らは自身のアルコール依存症と向き合おうとする。
どうにもならないし思い通りにもならない身体や自分や他人。何度も転び、進んでいるのか戻っているのか分からなくなるような悪戦苦闘の記録を綴った1冊。著者の視点で書かれつつも、3人の、そしてこれから読む人たちにも開かれた内容だと思います。
自費出版版の「宇宙人」シリーズを経て、今回は編集者・都築響一さんのレーベルであるROADSIDERSからの発行です。
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『宇宙人の部屋』
発行者 都築響一
編集 ROADSIDERS
価格 税込1650円
文庫本 320P
わたしが恋したひと、一緒に起きて寝て人生を共にしてきたふたりは宇宙人だった。空の上にある無限の暗闇ではなくて、酒瓶の底にある淀んだ宇宙の住人だった。素面だと道端の老犬のように静かに優しいのに、一滴のアルコールで彼らは制御不能な獣に変身した。そして20代のほとんどを獣の世話に明け暮れたわたしも、酒に依存する人間に依存しながら、状況を好転させるどころか彼らの人生をよけい悪化させているだけなことに、ある日気づいてしまった。
アーティスト“小指”がいま初めて綴る、傷だらけの日々の記録。生きることに不器用な、3つの魂がひとかたまりになって坂を転げ落ちていく先に底はあるだろうか。明るい陽の差す出口は見えるだろうか。
(都築響一)
【もくじ】
1. 全国のアル中に苦しまされてる皆様へ
2. Kのこと
3. Aのこと
4. 私のこと
5. Kの平屋物語
6. 回想
7. どうにもできないこと
8. 自助グループへ行ってみた
9. イネイブリング
10. A、自助グループへ
11. 脱落
12. 家族会
13. 記憶の中の部屋
14. 白髪の天使
15. 宇宙人の仕事
16. 路上生活者の深田さん
17. 大怪我
18. 後日談
19. 精神衛生福祉士
20. 目指せ!楽園ネズミ化計画
21. 断酒病院
22. スリップ
23. 断酒ポイントカード
24. 手紙
25. 共依存と赦し
26. あとがき